少女百景 言羽同盟

01 20, 2011 | Posted in 少女百景 | Thema 小説・文学 » オリジナル小説

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はじめは掌編として、別枠で書こうとも思っていましたが、他のものもたいして長くないため、一緒くたにしました。口調も、最初はですます調ではなかったのですが、統一するために、書き直しての公開となります。
字数は1200字ほど。さくっと読めるかと思います。前作とのつながりはありません。

実験的小説ということで、言葉に関する様々な視点を披露していくかたちとなります。その中に、淡い恋模様を織り交ぜていけたら、とこれは「少女百景」全体においての目標でもあるのですけど。
今回は、同音異句が主題となります。また機会があれば、他の主題もいつかは……。

※2011/5/3
読点の数を調整。また、名前にさんがついているのといないのがあったので統一しました。


【あらすじ】
教授こと早乙女琴葉。彼女の率いる言羽同盟。
言の魅力に取り付かれた少女達の織り成す、なんてことはないお話。



少女百景
~言羽同盟~


 言葉とは葉であります。そして、ときには刃ともなりうるものです。鮮やかに紡がれる言の波は魅惑的。それゆえ魅入られた者らが集う一派がありました。
『言羽同盟』
 かつては閑古鳥の鳴いていた文芸部より端を発し、一人の少女より生み出されました。
 今日も、教授の名を冠する文芸部部長、早乙女琴葉。銀縁の眼鏡を光らせ、言の迷い路へと少女らを導きます。
 そう、言羽同盟とは、言の羽を集め翼とし、言の限界、頂を見んと願う者たちの集い……。

 教授こと琴葉さんが、文芸部の部室にて、一人の少女を前に口を開きました。
「いらっしゃい。たしか光子さんでしたっけ。言羽同盟にようこそ。今日はどのようなご用件で?」
「あの、私、そのき……教授の噂を聞きまして、是非ともお話を、と思い」
「あなた、所属は?」
「それが、まだ決めてないのです」
 なんともしどろもどろになりながら、光子さんはあちら向き、こちら向き、語りました。
「私、何がしたいのかよくわからなくて。あの、それより、なんで名前をご存知で?」
 琴葉さんは頬杖をつき、そっと手を眼鏡のつるに添えました。位置を調整するように少し動かすと、彼女はふと微笑みます。相手が年下なのにもかかわらず、相変わらずの口調で、
「素敵な名前ですね」
「そ、そんなこと……」
 ふいに言われたものですから、光子さんの疑問も掻き消えてしまいました。彼女は、琴葉さんの硝子越しに注がれる矢を射るがごときまっすぐな視線に、思わず目をそむけます。それは、恥ずかしさゆえ、もしくは、愛おしさゆえ……。
「あなたは光子。満つるのミツでもあります」
「満つ……」
「そう、時満つる、水が満ちる、あなたのなかで何かが満ちる。それはなんでしょう。思い描いて御覧なさいな」
「あの、何を仰いたいのか……」
「光はコウと読みます。香り、高く、晃(あきら)か」
「適当に並べていらっしゃるのでは?」
「はたまた好み、恋う」
 その一言に、光子さんは動揺を隠せませんでした。赤面し、顔を隠します。紅くなった頬を、琴葉の視線から守るように。
「言の羽は、たとえ一枚であっても、それ自らは単なる重石にすぎません。言って楽になるのもまたよきことかもしれません。もちろん、あなたが語れる範囲で構いませんが」
 石像が見つめているかのような琴葉さんの視線に、光子さんは心打ち砕かれそうになりました。それでも、なんとか彼女を見つめて言いました。
「はい、その……確かに、私には好きな人がいます。それは、文芸部のお方で……それが、文芸部に入る口実で……」
「私の元へ来たと」
「はい」
「ようこそ。文芸部へ、そして言羽同盟へ。私たちはあなたを歓迎します」
 琴葉さんは優しく笑んで言いました。

 こうして光子さんは、文芸部の一員となりました。琴葉さんは、彼女が抱く想いを全て打ち明けたと思っていました。
 しかし、彼女の本当の想い人が、自分自身であることは露知らず。
 『恋う』という言の羽を、背負うことに相成ろうとは、さしもの教授の頭でも、考えの及ぶ範疇にはなかったのであります。



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樹

似非店員:樹
百合と眼鏡が好きな人です。
日本語、和風なものも大好物。
掲載しているものは、主に百合もの、ファンタジー小説となっております。
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