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少女百景 音紡ぎ連盟

01 09, 2011 | Posted in 少女百景 | Thema 小説・文学 » オリジナル小説

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少女百景、二作目です。
前作の「微笑み狂奏曲」とのつながりはありませんので、こちらからご覧になっても大丈夫です。
題名ですが、とあるアニメに思いっきり影響を受けています。カテゴリをさらっと眺めてみれば、はっとされるかと。

前回1000~3000といいましたが、早速超えてしまいました。参考に、3300字ほどです。
あくまでも目安と考えていただければ幸いです。

登場人物は敦美(あつみ)と礼子で、敦美視点となります。
では、続きより本編です。

※2011/5/3
一部改稿。漢字の誤り、表現の一部変更など。


【あらすじ】
礼子さまの突然の思いつき。
音は紡がれやがては糸となる。
音紡ぎ連盟の調べよ響き渡れ、心の隅まで染み渡れ。



少女百景
~音紡ぎ連盟~


 音を紡ぎましょう。
 旋律の糸をつなぎましょう。
 決して途切れることなき奏でを……

   * * *

 それは礼子さまのこんな言葉から始まりました。
「音楽部を一緒くたにまとめてみない?」
 放課後の教室。赤く沈む夕陽を背景に、礼子さまは私に言いました。
「なぜ私に言うのですか? 違う部活の方に頼めばよろしいのでは」
 私と礼子さまは吹奏楽部です。学内では部員が最も多く、いくつもの賞を受賞している強豪として名高い部でありました。
「敦美さんったら、興味がないの?」
「興味も何も、吹奏楽部だけで十分じゃないですか。他の雑多な部活をまとめても、意味はないように思われます」
「私の言いたいことが分かっておられないようね」
「何もおっしゃっておりませんから」
 礼子さまは二年上の先輩です。一年生の私は入部してから常日頃、彼女の遊び相手でも言いましょうか、お相手をしておりました。同じ学年の友人とお話になればよろしいのに、なぜか私にばかり話しかけてくるのです。何の因果か、奏でる楽器が同じフルートであることも、礼子さまが近づく、ほどよい口実となりました。
 礼子さまは華族の令嬢で、振る舞いも上品千万。下級生の憧れでもありました。それが私ばかり相手するものだから、いささかの嫉妬の目にさいなまれることもしばしば。
 その礼子さまは、絵画が笑うかのように、それは優雅に微笑みました。
「もう数ヶ月もしたら学園祭ね」
 何をおっしゃりたいのでしょう。私にはわかりかねました。たとえ他の生徒より多く会話を交わす相手といえど、わからぬことはあるものです。彼女に限っては、わからないことのほうが多いのですが。
「秋の足音も聞こえてくる頃ですからね」
「そこでよ。校内を音で満たそうと思うの」
 悪いことを思いついた幼子の顔で、礼子さまは言いました。
「学舎のどこをまわっても音があふれている。そんな空間を、一日だけでもつくってみたいの」
「しかし、競演会以外での演奏の許可がおりますでしょうか」
「だから、そこは数で勝負なのよ」
 私はあきれました。まるで考えなしにおっしゃっていたと知ったのですから。
「ですが、素敵な一日となるでしょうね。さながら音を紡ぎ、どこまでいっても途切れぬ旋律の糸のように」
「それだわ!」
 突然大きな声を出すものですから、私は心臓が破裂せんばかりに動揺しました。
「この一日だけの大音楽隊の名前。『音紡ぎ連盟』なんてのはどう?」
「それよりも、まずは協力者を集めないとですよ」
 私は、いつの間にかすっかり乗り気になっていました。
 だって、考えてみてごらんなさいな。いつもは校舎の一割にも満たない舞台、それが学園内いっぱいを使うというのです。観客だって、お客様に生徒、先生方と、皆様方にあまねく音の贈り物を差し上げることができます。これ以上に、音楽に携わる者にとって嬉しいことなどございましょうか。彼らの至高の喜び以外に……。

 それからの礼子さまの行動といったら、侵略すること火のごとくとでもいいましょうか、それは迅速に事を進めていきました。
 どんな魔法を使ったのか、いつのまにか他の部活の生徒達は眼を輝かせ、大楽団の初舞台を心待ちにしておりました。生徒会も先生方も彼女の思想に感銘を受け、あれよあれよと事は進んでいきました。
 私も僭越ながら、学園にいくつも存在する音楽部の参加をうながしました。驚くことに、私が名も聞いたこともない同好会も含めると、その数は二桁を超えるほど。和楽器に西洋楽器、初めて聞くような民族楽器。さらにそれにたずさわる部活、同好会が幾重にも別れて存在しているのです。
 なるほどこんなにもたくさんの部活が、一斉に音を奏でたら、さぞ華やかなことでしょう。
 それにしても、このような大それたこと、私には思いも及びません。まことに、礼子さまの頭の中は摩訶不思議な異空間でできているに違いありません。それほどに大きくて、推し量ることのできない。あるいは、彼女をすこしでも知る殿方が、彼女を……。いえいえ。私は首を振ります。そんなことないと。
 なぜでしょう。心のうちでは、彼女と今のようにいつまでも会話できる、そんな未来を信じて疑ってはおりませんでした。卒業すれば離れ離れになってしまう。そんなことさえ、信じられなかったのです。

 さて、時はやってまいりました。二日間にわたって行われる学園祭。その最終日と相なりました。
 既に名も知らない、古今東西、多種多様な楽器を持った生徒が、校内のいたるところで見受けられます。何が起こるか知らないお客さま方、生徒たちは、不思議な大楽団に瞳を輝かす者あれば、訝しげな視線を送る者もおりました。
「なにが起こるのかしら」
「こんなこと、案内には書かれていませんでしたわ」
「あら、私は学友より聞き及んでおりましたが」
 生徒たちは思い思いに会話しています。私たち吹奏楽部は、幅の広い廊下の一画を占め、一人の来訪を心待ちにしておりました。
「あ、礼子さまよ!」
 その一声によって生徒一同、一斉に同じ方向に顔を向けました。まるでモアイ像のように。私も一体のモアイ像となり、その方を見つめました。
 すると、一人の少女が悠々とフルートを掲げながら歩いてきます。その姿は学園内のあらゆる生徒の憧憬を一斉にあびる、まさにマリア様のごとく麗しき乙女。礼子さま、その人。
 廊下の空気はその一瞬確かに変わり、彼女を崇める少女たちは、皆心きらめかせ、眼光もきらきらと星が見えるよう。一瞬の静寂は、それだけで礼子さまの存在の大きさをものがたっておりました。
 次いで沸きあがったのは、少女たちの、甲高い悲鳴ともとれるほどの歓喜の声。
 その大音響の渦の中を、礼子さまは気にするでもなく私のもとにゆっくりと近づきました。
「そろそろね」
「はい」
 それだけ言い交わしただけなのに、また黄色い歓声が飛び交いました。
「あの二人もしかして……」
「私の礼子さまがあのようなお方になびくわけが無いわ」
 などと囁き声も聞かれます。やれやれ、この方の人気にも困ったもの。目をつけられた私の苦労も考えていただきたいものです。
「準備はよろしくて?」
 その澄んだよく通る声に、周りを取り巻く生徒たち、お客さまがたのどよめき声は、潮が引くかのようにおさまりました。
 大楽団は一斉にうなずきます。そして楽器を構える音。そしてまた静寂。
 最後に礼子さまは私に片目を一度閉じて見せ、お客さま方を振り返り一礼しました。さて、何の意図あってでしょう。私はいくばくかの緊張をたずさえながら、皆に合わせて深々とお辞儀しました。

   * * *

 まるで夜のしじまのごとく、校舎は静寂に包まれました。祭りの華やかさはどこへぞ消えたか、一瞬の戸惑いは次の瞬間に打ち破られることとなります。
 一人の少女の奏でる西洋の横笛の音が、波のように、校内の大楽団に伝わっていきます。目を閉じ心から聴き入ってしまう、彼女の奏でるときのみ、時間がゆっくりと流れているようでした。
 そして大楽団の合奏がはじまりました。指揮者などはおりません。皆が皆、己の全てを楽器に注ぎます。
 時が再び動き始めたかのように、人々は歩き始めます。校内を流れる幾多もの音を拾い集め心という籠に収めるためです。
 時には和楽器、時には洋楽器。管楽器に鍵盤、鼓の鼓動に弦の響き。
 あらゆる音は華やかに、高らかに、宴の最後を飾ります。
 音は紡がれてゆきます。
 少し間違えれば不協和音。しかし、そんなことを感じる者は一切おりません。
 和洋折衷ならぬ世界折衷の奏で。
 次々に新たな音へとつながるさまはまさに糸を紡ぐかのごとく。
 音紡ぎ連盟、たった一度の大合奏。しかと皆の心に響いたことに相違ありません。
 そしてひと時の宴は終わりを告げました。

 さて、このあと礼子さんと敦美さんの、二人だけの密会が催されることとなるのですが、これ以上語るのは野暮というものでしょう。
 音紡ぎ連盟は解散しました。その後、方々で様々な反響が嵐のように巻き上がったことは、また別のお話……。


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似非店員:樹
百合と眼鏡が好きな人です。
日本語、和風なものも大好物。
掲載しているものは、主に百合もの、ファンタジー小説となっております。
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