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ひだまりスケッチSS 「橘文布教活動」

10 11, 2010 | Posted in ひだまりスケッチ | Thema 小説・文学 » 二次創作:小説

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ひだまりスケッチの夏目視点のSSです。

前半と後半で分かれているのですが、あまりつながってないかもしれません。ヒロをなんとか入れようとして、序盤に回想ですこし入れたのですが後半は思いの向くまま書いたら、沙英と夏目だけになっちゃいました。
見返してみるとやっぱり沙英って罪な子だなぁ、と思わざるを得ません。

内容としては、アニメでもすこし描かれていた、夏目の変な行動をもとにした作品です。


【あらすじ】
橘文大好きな夏目。でもその実は……
本屋で及んだ布教活動。そこで出会った人はまさかのあの人。
副題「沙英のカミングアウト」



~橘文布教活動~

 私こと夏目は、橘文という作家の大ファンである。もといその実は、橘文、いや本名沙英に対するひそかな恋心だった。
 沙英とは、やまぶき高校に入学してからずっと違うクラスだった。クラス替えがないことがこれほどに恨めしいと思ったことはないだろう。
 ヒロという二つのお団子にまとめた髪が特徴的な、沙英と同じひだまり荘の住人と、いつのまにか夫婦とまで揶揄(やゆ)されるほどに仲良くなっていくのを、私は歯噛みしてただ見つめていた。
 沙英に本当の気持ちを知られたくないから、と心にもないことを言って逐一彼女に突っかかってしまった。素直になれない自分が何度いやになったことか……
 いつしか私は、彼女に対していびつな想いを抱いてしまった。
 橘文の小説の多くは男女の恋愛ものだ。沙英にそんな経験などないことは、なんとなく予想できた。恋愛を知らないで恋愛ものを四苦八苦しながら書く沙英の姿を想像すると、自然と頬がゆるむ。
 彼女の小説を読むとき、次第に男性役を沙英、女性役を私と置き換えて読むようになっていった。うっとりしながら読みふける私の姿は、さぞ不気味だろう。
 ファンレターもといラブレターは何通も送った。この気持ちが届いたかどうかはわからない。けれど、私が彼女を心から想ってることは変えようのない真実……
 何度読み直したかわからない。私は橘文中毒となっていた。そして、あるとき、彼女の小説の中に一人の少女の影が浮かんだ。
 作品の中のヒロインに私を重ねるごとに、違和感が増していった。もともと私ではないのだからあたりまえなのだが、すこし意味合いが違う。
 ある人物をヒロインに重ねると、奇妙なほどにぴったりとあてはまるのだ。
 それがヒロだった。
 橘文の小説の中には、いつも彼女の影が垣間見える。
 それでも……それでも私は橘文が好きだ。文字の海の向こうの果てにいる、かの人のことを思って止まないのである。

     *

 閑散とした本屋を見つけては、私はある行動を繰り返していた。今日の標的、といっては聞こえが悪いかもしれないが、活動場所は、夕方は凪の時間帯と呼ばれるほど誰も訪れず、夜になると会社帰りの大人たちが訪れるというかっこうの場所だった。
 橘文の小説が掲載されている雑誌「月刊きらら」が置いている場所には、他にもさまざまな雑誌が並んでいる。
 右、左、右と横断歩道を渡るときのマナーのように首を振り誰もみてないことを確かめると、気配を消す忍者さながらの慣れた手つきで、「月刊きらら」を他の平済みされている雑誌の上に重ねようとする。この雑誌があたかも売れ筋であるかのように、だ。
「あれ? 夏目?」
 聞きなれた声に心臓が飛び上がる。窃盗の現場を見られた犯人のごとく、恐る恐る後ろを振り向くと、そこにはボーイッシュな短い髪型と知的な趣をかもし出す眼鏡が印象的な沙英その人がいた。
「その雑誌買うの?」
 手元を見ると、まだ手は雑誌を浮かせた状態。これなら購入すると見えてもおかしくないはずだ。
「え、ええ、そうよ」
「この雑誌ってすごい作家の作品がたくさん載ってるんだよね。私も負けてらんないなぁ」
「そ、そうよねぇ」
 橘文なんか素敵よね……とは言えなかった。もしここで言ったらどうなるだろうか、とも考えたが、それは私にとって、彼女に対する告白も同然なのだ。恥ずかしくて言えるはずがなかった。
 だからまた、
「橘文なんて作家にはもっと頑張ってもらわないとよね。あれじゃまだまだ私の心には届かないわ」
 と、心にもないことを言ってしまった。
 しかし、当の沙英といったら、
「あはは。そうかもね」
 と、涼しい顔をして言ってのけるのだ。沙英自身が隠しているからしょうがないといえるかもしれないが、それでも、すこしは落ち込むものではないのだろうか。
 それとも、心の奥底では傷ついているのだろうか。だとしたら……私が言わなければいけないことは……。
 だめっ! 言えない。
 ――嘘、とてもいい小説だと思うわ。
 たったそれだけのこと。でも言えないの。素直になれないの。
 なんで? なんで!?
「あ、あんたもせいぜい頑張りなさいね。ど、どうせあんまり売れてないんでしょうけど」
 ああ、まただ。嫌味を言ってしまった。今度こそ沙英に嫌われてしまう。
 私は彼女の前に立つ資格はないのかもしれない。
 逃げるようにレジに雑誌を持っていくと、千円札を置いて、お釣りももらわずに本屋を飛び出した。
「あ、夏目!」
 こんな性格に誰がしたのだろう? 答えなんかないとわかっていても、考えられずにはいられない。
 どうしたら直るのだろう。もし、直してくれる人がいるのだとしたら……
「夏目ー!!!」
 後ろから沙英の声が追いかける。凛々しく、私の心の芯まで揺らすその声音。いつまでも聞いていたいと願うほどに愛おしい……
「ありがとー!!!」
 その声に思わず振り向く。
「頑張って、って言ってくれて、うれしかった!!」
 ぶわっと涙があふれ出た。あんなに嫌味を言ってしまったのに、彼女はその内の感謝の言葉、私の本心のみを拾ってくれた。嬉しいのと、自分に対する嫌悪感とがあいまって、去来した思いに私の涙腺は耐えられなかった。
 その姿を見られたくないからと、きびすを返し駆け出す。
「明日お釣り渡すからー!!」
 これ以上言っても止まらないと思ったのかもしれない。彼女は追いかけてこなかった。 追いかけてほしくなかった。こんなみじめな自分をさらすなんて、とてもできない。もう十分みじめだけども……。
 追いかけてくれなかったことが、うれしかった。私の意をくみ取ってくれたと勝手に解釈した。こんなことがある度に、彼女への思いは募っていく。沙英のことが、容姿、行動、すべてにおいて大好きでたまらない。
 私は彼女が見えないとわかっていながらも振り向く。西より差し込む夕日は、雲の隙間をぬってまるで光の幕のように、鮮やかな赤に街を染めている。
「ありがとう……」
 そう呟くと、自分がすこし素直になれたような気がした。それは、小さな一歩。けれど、沙英という存在が私を少しずつ変えていってくれるのがわかる。
 こんな私でも、あなたのことを好きでいていいのかしら?
 心の中で、誰にでもなく問いかけた。



「橘文布教活動その2」へつづく




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似非店員:樹
百合と眼鏡が好きな人です。
日本語、和風なものも大好物。
掲載しているものは、主に百合もの、ファンタジー小説となっております。
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