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旅のカケラ 鉄の馬

11 23, 2010 | Posted in 旅のカケラ | Thema 小説・文学 » オリジナル小説

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旅のカケラ第四弾です。
2700字程度で、今まででは一番長いです。

皆が暗鬱とした表情の村。
そこでの、とある出会いのお話です。
この話単体で読んでもかまいませんが、「ガレキの都」も読んでおくと、はっとするかもしれません。
やっとこさ名前が明らかになりますよ。



旅のカケラ
~鉄の馬~


 そこは孤立した村だった。人口は数十人ほど。まるでこれから世界が終わるかのように、皆どこか暗鬱とした表情をしている。
 ある日、一人の旅人が村を訪れた。まだ、子どもと言っても差し支えのないほどの若さだ。肩のところまでのびた黒髪は、ともすれは少女のように見える。だが、その人を寄せ付けないような憮然としたまなざしは、どこか中性的な趣を漂わせていた。
 旅人は村に入り、すぐにいぶかしげな表情を浮かべた。収穫期のはずの田畑は、ほとんど作物がなってない。雑草が、自らの力を誇示(こじ)するかのように延び、地面は荒れていた。
 ひげをたくわえた、この村の長らしき老人が、彼、もしくは彼女をむかえた。
「ようこそいらっしゃいました。私はこの村の長でございます。訪れて早々、こんなことを言うのは気が引けるのですが……ここには宿はありません。客人をもてなす余裕もないのです」
「いえ、お気になさらずに。では、空いてる家か、部屋はありませんでしょうか」
「それなら、こちらに」
 村長が案内したのは、小さな木造の小屋だった。人が四人入っていっぱいの小屋の中には、人の住む気配はまるでない。しかし、なぜだかほこりはほとんどたたないほどに、掃除されていた。
「この小屋は?」
「つい先日まで、食料庫として利用していた蔵です」
 旅人はなるほどとうなずいた。
「申し訳ございません。布団も用意できずに」
「大丈夫ですよ。野宿と比べれば断然ましですから」
「…………」
 村長はおしだまり、なぜかうらやましげに旅人を見つめていた。今にも泣き出しそうな顔をすると、
「明日には?」
「ええ、長居はできませんので」
「どちらへ?」
「北の橋を渡ろうと思っています」
 すると、彼は突然驚がくの表情をうかべた。
「あんな長い橋を渡るのですか? それも徒歩で」
「はあ。それはさすがに」
 旅人は頬をかいた。
「ここで足が拾えると聞きましたもので」
「足ですか?」
「ええ。一晩過ごせば、と」
 いぶかしげになりながらも、村長はうなずき、とぼとぼと小屋を後にした。
 翌朝、すこし開け放していた扉の隙間から差し込む陽光に、旅人は目を覚ました。鍵ははなからついていなかった。
「おはようございます」
 扉を開けると、そのときを待っていたかのように、村長の姿があった。
「入ってもよろしいですか」
「どうぞ」
 村長がのそのそと小屋に入り、旅人は扉を閉めた。彼は木の床の上に正座した。旅人は寝袋を座布団の代わりにして、腰をおろした。
 彼は、なにかもどかしげに口をもごもごとさせる。先に口を開いたのは旅人だった。
「この村はいったい?」
 昨日見せたような悲しげな表情を浮かべると、彼は苦しげに話しはじめた。
「あなたも、この村を訪ねたときに感じられたでしょう。ここは、他の村とは異常なほどに離れている」
「たしかに、一日やそこらではたどり着けませんでした。私は南から来たのですが、他の方角にも村がないのですか?」
「そうです。ですから、この村は孤立してしまいました。旅商人はまるで訪れず、活気もまるでありません。たまにあなたのような旅人が訪れるだけでございます。それでも、なんとか細々とやってきたのです。しかし……」
「凶作ですか」
 彼の後を次いで旅人が言った。彼はうなずいた。話は終わりとでもいうように、彼はうつむいてそれ以上語らなかった。
 不気味な沈黙に耐えかねたのか、旅人が尋ねる。
「他の村に移ることは考えなかったのですか?」
「皆、この村に愛着がある。そんなことはできんよ」
「なにか、他に方法は考えなかったのですか?」
「……あんたが言ってた足でもあればなあ」
 最後の村長の言葉は、独り言だった。
 村長が立ち上がったとき、外で、突然歓声ともどよめきともとれる声がわきあがった。二人が慌てて外に飛び出すと、村人たちは一様に、村の外、ある一点を見つめていた。
 黒い影が少しずつ近づいてくる。それも、とてつもない速さで。やがて、その影の正体が明らかになるほどに近づくと、村人たちが叫んだ。
「鉄の馬だ!」
「まさか、伝説の」
「よかった。これで私たち、救われるのよ」
「今日は宴だ! おもてなしの用意をしろ!」
 まるで今から祭りでもはじまるかのような歓声に、旅人はいぶかしげな顔をした。今までの暗い雰囲気が、現の幻であったかのような光景だった。
 旅人の隣にいたはずの村長は、いつのまにかいなくなっていた。彼は村の入口で、訪問者を迎えようとしていた。
 耳をつんざくような爆音がとどろいた。黒光りする、二つの車輪がついた鉄の物体が村長の脇を通り抜ける。旅人の前まで走ると、それは停止した。小形の二輪車にまたがった人間は、綺麗な灰色の長髪。誰もが美人と振り向くであろう若い女。黒い色ガラスの眼鏡をはずすとその表情が明らかになる。
 新緑のような色の瞳でこちらを見つめると、彼女は口を開いた。
「乗りな」
 旅人は小屋に戻り荷物をまとめると、背にかつぎ、女の後ろのあいている座席にまたがった。
 周りでは、なにが起こるのかと、村人たちが取り巻いている。
「行くよ」
 快活な声で言うと、彼女はごそごそと手を動かす。また大きな音が鳴り、二輪車は動き出した。
 村の北の出口までいくと、二輪車はうなりをあげたまま止まる。
「あんたは、この村に名残はないだろうけど、あちらはいろいろと言いたいことがあるみたいだね」
 村長を先頭にした、村人たちの集団が、射るようなまなざしで二人を見つめていた。彼らは狂ったように怒声をあげた。
「逃げる気か!?」
「私たちのために来たんじゃないの?」
「お願いだ、助けてくれ!」
「黙りなさい!!」
 村長の一声に、村人たちは潮がひいたかのごとく押し黙った。
「どうしてもいかれるのですか」
「ええ、どうやら彼女が、私の足のようです」
「……お達者で」
「ありがとうございます」
 村人たちの怒号がまたわいた。しかし、女がまた二輪車から爆音を響かせたので、その声はかき消された。
 二人を乗せた鉄の馬は、徐々に速度を増していく。村人たちの影が、どんどんと小さくなっていく。
「あたしはキノンってんだ! あんたは?」
 キノンと名乗った女が叫んだ。
「センリ! ねえ、あなたが私の足なの?」
「見りゃわかるだろ! あのうさんくさい野郎に頼まれたんだ。まあ、短い間だけどな」
「よろしくね」
 センリと名乗った旅人が、小さな声で言った。
「何だって!?」
 センリは軽く笑んで、キノンの背に顔をうずめた。
「ねえ……」
 センリが、キノンの耳元で囁いた。
「気にするな。あの村は、どのみち救いようがなかったさ。あたしたちにできることなんて、なにもない」
 センリは後ろを振り返った。
 村はもう、地平線に沈んでしまっていた。



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樹

似非店員:樹
百合と眼鏡が好きな人です。
日本語、和風なものも大好物。
掲載しているものは、主に百合もの、ファンタジー小説となっております。
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