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ひだまりスケッチSS 「橘文の苦悩」

10 30, 2010 | Posted in ひだまりスケッチ | Thema 小説・文学 » 百合小説

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沙英×夏目SS第三弾です。といっても、依然書いたものの続きとなります。
今回は沙英視点です。
次回の序章的な意味合の話となります。

前作も合わせてご覧ください。(下に行くほど新しい話です)
「橘文布教活動」
「橘文布教活動その2」


【あらすじ】
夏目との、あの書店での出来事の後、橘文こと沙英は悩んでいた。
書けない日々。心の中は、一人の少女に縛られて……



~橘文の苦悩~

 実体験というものは、創作を行ううえで、時に助けになるし、時に妨げになったりもする。前者は言うまでもない。実際に体験したことは、より現実味を帯びた表現で書くことができるからだ。後者は、実体験が脳裏に焼きついてしまい、それしか書けなくなってしまうときだ。
 今のこの状態は、はたしてどちらなのだろうか。
 先日発売された月刊きらら。その内十数ページを、私の小説が占めている。改めて読み返してみて、私はがく然とした。
 この小説を書くとき、なぜか物語が頭の中を閃光のように駆け巡り、一気に創り上げたのは記憶に新しい。書きたい! という欲求が脳内麻薬のように作用し、筆が止まることはなかった。
 しかし、改めて出来上がった誌面を、他者の視点で眺めるとよくわかる。
 その小説のヒロインは、私が良く知る少女の生き写しのような性格だった。
 書き上げる前にあった出来事を思い浮かべる。すると、どうしても、あの本屋で出会った少女しか、脳内に張った映写幕には映し出されなかった。
 そう、夏目だ。
 私はかの小説を書くとき、確かに彼女のことを考えていた。それも極甘の恋愛小説のヒロインとして、だ。
 これは一体何を意味するのだろうか。
 私が彼女に抱くこの思いは、何?

     *

 例の小説を書いて以来、私の筆は、突然呼吸困難に陥ったかのごとく止まった。いや、正確にいえば、夏目のことを思いはじめてからだ。
 心の中がもやもやとする。まるで暗雲が漂ってるかのように、私はこの得も言われぬ気持ちに悩まされていた。
 私は一体、どうしたいのだろう。
「スランプ?」
「ん? あぁ、ありがとう」
 夜遅くの執筆活動中。隣室のヒロが、夜食を持って訪ねて来た。彼女の作る食事は、いつも止まった私の執筆速度を速めてくれる、いわば特効薬のようなものだ。
 しかし、このときばかりは、その特効薬も効き目はなさそうだった。構想も、プロットも、全くの白紙では、書きようがない。
 ヒロは手近にあるベッドに腰かけると、しばらく私の苦悩する様子を眺めていた。いつもなら気にしないのに、なぜか、そのことがまた胸の奥に暗い影を落としていった。
 一人にしてほしい。私は、彼女に言葉をかけるために振り向いた。
「ヒ……」
「沙英」
 突然のヒロの声に、私はすこしびくついた。彼女の顔は、いつものように穏やかなまま。しかし、その奥に、なにかくすぶるような感情が、垣間見られたような気がした。
 ヒロは、甘くなでるような声で続ける。
「昨日、夏目さんにあったわ」
 彼女の口から飛び出た名前に、動揺を隠せなかった。
「へ……へぇ。夏目が……。どこで会ったの?」
「彼女、あなたが橘文ってこと知っているみたいね」
 ヒロは私の問いに答えず、こちらの胸を揺さぶる言葉を、どこか冷たい口調でつむいだ。
 脳裏に、あのときの出来事がフラッシュバックする。
 ――橘文なんて作家にはもっと頑張ってもらわないとよね。
 ――頑張って、って言ってくれて、うれしかった!!
 本屋での、夏目との会話。途中でお釣りも払わずに、雑誌を持って飛び出た彼女に、叫んだ言葉。あれではカミングアウトしたも同然だ。
 あの日、私はそのことに、今悩んでるのと同じくらいに頭を抱えたものだ。ただ、それは長くは続かなかった。
 夏目になら、知られても良いと思ったのだ。
 そのときからだ、私があの小説を書き始めたのは。
 点がつながる。様々な思いが、夏目という一つの絵となって、正体を現す。それは計り知れぬほどに大きな思い。
「そう……夏目が……」
 私は、どこか遠い目をしてつぶやいた。
「ねえ、沙英」
「なに?」
「夏目さんのこと……どう思う?」
 ヒロの言葉に、逡巡する。何を意図してその問いかけをするのか、わからなかった。
「なんか、夏目ってどこか素直じゃないんだよね。でも、そこが可愛いっていうのかな。なんか不思議な魅力がある」
 私は、普段から思っている彼女についての感想を述べた。あるいはそれは、逃げだったのかもしれない。ヒロは、そんなことを訊きたいのではないということが、なんとなくではなく、確信できた。
 案の定、彼女は首を横に振る。
「そうじゃないの。……沙英にとって、夏目さんってなに?」
「……なにって、普通の……友だち」
 友だちと言うとき、なにか抵抗を覚え、どもってしまった。胸にあふれる不安感。もしくは……罪悪感。
 私の言葉に、ヒロは突然表情を曇らせた。今まで見たこともないような、不快感をあらわにし、それでいてどこか悲しそうだった。 
「……彼女のこと、もっとよくわかってあげなさい」
 そう告げると、ヒロは部屋を出て行った。
 おやすみ、と声をかけるもはばかられる雰囲気だった。
 一人残され、半ば放心した状態で、ヒロの持ってきた食事に手をつける。味などわからない。いつもの、彼女の優しさあふれる一品が、今は食道を通り抜けるただのかたまりに感じられた。
 ヒロは、なぜあんなことを言ったのだろう。私が、夏目のことをわかってあげてない? なにを?
「ああん、もうっ!」
 私は頭を抱えて、叫んだ。そして、決心した。
 夏目に会おう。そして、この気持ちの正体を明らかにしよう、と。
 その日は、一切筆が進むことはなかった。構わない、この胸のつっかえが外れれば、きっといつものように書けるはず。
 食事をした後にすぐに寝ると太るとか、そんなことは関係なかった。ベッドの上に、転がり込む。布団を身体にかけると、私はまぶたを閉じた。
 そして、闇の中、一人物思いにふける。
 脳裏に浮かぶのは、かの少女の姿。
 夏目のことを想うと、胸の奥がチクチクと針を刺されたかのよう痛む。



「素直になれたら・・・」へつづく




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似非店員:樹
百合と眼鏡が好きな人です。
日本語、和風なものも大好物。
掲載しているものは、主に百合もの、ファンタジー小説となっております。
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