ゆるゆり 二次創作 双の望み

08 20, 2011 | Posted in その他二次創作 | Thema 小説・文学 » 二次創作

4 Comments
 かなり久しぶりの二次創作となります。今回取り扱いますは、アニメが絶賛放送中の『ゆるゆり』です。アニメではまだ登場してないキャラを主人公とした話なので、ネタバレの気配を察知し「危険!」と直感した方は即刻ブラウザの戻るボタンという非難口に直行するか、閉じるか、他のサイトに亡命するかしてください。

 原作をご覧になった方にはおなじみ池田姉妹の妹、千鶴視点で、綾乃×千歳なお話となります。ただ、ガチな展開を期待すると肩透かし食らうかもしれませんので、そこらへんご了承くださいませ。
 また、関西弁については、似非な部分が多様に混じってる恐れが有ります。違和感ある点ありましたら、指摘いただけるとありがたいです。


~双の望み~

 幼い頃から本を読むのが好きだった。文字の連なりを目で追い、記されてる物語を読み取っているだけで、時を忘れてしまう。想像した物語を頭の中で描いていくと、自分が物語の世界に迷い込んだ錯覚に陥る。だけど、読み終わった後、現実に引き戻された際、自分は傍観者に過ぎないと悟る。この感覚を知ったときから、より読書の時間を大切に思うようになった。集中し、誰にも邪魔されないひとときは、私にとって宝物のような時間。少ない友人も、このときばかりは声をかけるのを控えてくれた。
 図書室は静寂に包まれた冬の森に似ている。眠りを妨げようとする者を追い返さんとする寒風も吹かぬここは、読書には最適の場所だ。季節が移ろおうと、備え付けられた空調によって、常に生徒達に快適な空間を提供してくれる。
 生徒のほとんどは黙々と本を読むか、勉学に励む。少し集中すれば、カリカリとシャープペンシルを走らせる音も、本の頁をめくる音も、小鳥のさえずりと同じく気にするものではなくなる。
 が、この静寂を破らんとする不届き者は、数百人もの生徒を有する学校という世界に、何人かはいるものだ。
 私はある一人の顔を思い浮かべるが、すぐに首を振って頭から追い出す。思い出すのも腹立たしい。
 放課後の図書室は、テスト明けということもあってか、人はまばらだった。夏休み前の夕方、かすかに赤みを含んだ室内はまだまだ明るい。
 ヒグラシの鳴き声が聞こえ始めた頃、私はようやく一冊の本を読み終えた。
 と、そのときだった。図書室のドアが開く気配がしたのだ。
「もう帰ったんとちゃう?」
 朗らかな声の関西弁を耳にし、すぐに姉の千歳であると悟った。となると、一緒に入ってきたのは、
「まだ、娯楽部のみんなはいたのだし、校内にいるはずよ」
 予想通り、生徒会副会長の杉浦綾乃さんだった。
 私はとっさに読み終えた本の頁を戻し、縦に広げると、顔が隠れるようにした。
 影から、ちらちらと覗き見る。少しでも長い間、二人が並んでる姿を見たかったのだ。それに、彼女らを見た瞬間に少し涎(よだれ)をたらしてしまった。見られたらはしたないと思われてしまう。
 推察するに、杉浦さんはあの憎き歳納京子を探しているのだろう。さきから、受け付けの生徒にあれこれ尋ねているのは、その旨に関することに違いない。
 いつもなら「歳納京子ーーーーっ!!」と威勢よく登場する彼女だが、図書室という場では、さすがに声を抑えていた。そのため、何を話しているかは断片的にしか聞き取ることができない。それでも、「まったく、いっつもいっつも」と怒気を秘めた声を「まあまあ」となだめる姉さんとのやり取りから、大体の状況は理解できた。
 まったく。あんなズボラな人のどこがよいのかと、いつも杉浦さんを見ていると思う。母性本能をくすぐられたりするのだろうか。私から見たら、ただうっとうしいと思うだけなのだけど。
 中学に入って最初の友達で、いつも一緒にいる姉さんのほうが、余程似合っているというのに。姉さんは、、杉浦さんの気が違う人に向いていくのを知り、一歩引いているのだ。本当は、自らの気持ちを打ち明けたくてたまらないのに。
 私は眼鏡を外し、心を研ぎ澄ます。
 ――綾乃ちゃん。私もう我慢できひん。
 姉さんは杉浦さんの手を引き、図書館の隅へと連れて行く。
 ――ちょ、なにするのよ千歳。
 ――綾乃ちゃんが、私の気持ちに気づいてくれへんから。
 涙を流しながら、杉浦さんを書棚に押し付け、顔を近づけていく。
 ――ダメよ。人に見られちゃう。
 ――心配せぇへんでも、誰もきぃひんよ。
 杉浦さんは、強引に迫る姉さんを押し返し、
 ――バカっ。どれだけ一緒にいたと思ってんのよ。千歳の気持ちなんか、とっくに気づいていたんだから。
 姉さんが口を開く前に、杉浦さんは自らの唇で、姉さんの唇を塞ぐ。そして、そっと互いの衣服をはだけさしていき……
「そんな涎たらしてたら汚いやろ」
 あれっ。なんでこの場面でそんな台詞? 訝り、眼鏡をかけなおすと、姉さんと杉浦さんが、心配そうにこちらを見つめていた。
「これ、よかったら使って」 
 杉浦さんがポケットティッシュを数枚差し出した。私は、気づかれてしまったことで、心臓が飛び出てしまいそうなほどに緊張していた。なんとか「ありがとうございます」と声を絞り出し、受け取った。
 卓を見ると、汁物のお椀をひっくり返したときくらいの量を、涎としてこぼしていたと気づく。私は羞恥心に目が回りそうになる。が、杉浦さんが言った言葉に我に帰る。
「ねえ、歳納京子って見なかったかしら」
 その名を聞くと、どうしてもしかめ面になりそうなのだが、杉浦さんの手前、努めて冷静に私は答える。
「会ってはいませんが。また、何かやらかしたんですか?」
「やらかしたっていうほどでも……。プリントの提出期限とっくに切れたっていうのに、まったく出す気配がないのよ。ほんと、世話が焼けるったらないわ」
 杉浦さんは一見すると怒っているように思える。だが、その奥に、どこか嬉しそうな感情が透けて見える。
 姉さんは杉浦さんの後ろで微笑んでいた。きっとまた、杉浦さんとあいつで……。
 胸が痛かった。キリキリと万力で締めつけられるように。洪水のように溢れる想いは止め処なく、積み溜めた疑問を口に出してしまう。
「杉浦さんは、どうして歳納さんが好きなんですか」
 途端、杉浦さんは赤面する。「え、どうして」と答えに窮する彼女に、私はさらに問わんと迫る。
「すぐに言えないってことは――」
「千鶴!」
 遮ったのは姉さんだった。私はそれ以上言葉を紡ぐことはできなかった。いつも笑みを絶やさぬ彼女からは想像できないような哀しげな表情で、姉さんが見つめていたからだ。ほんの一瞬だけ浮かべた表情。それは、私の目に焼きつくように残った。
 いつもの笑顔に戻った姉さんは、そっと私の手を取る。
「ちょっと待っといてな、綾乃ちゃん」
「え、えぇ……」
 姉さんの手は、本の森へと私を誘う。つかんだ手は、包み込むという表現のほうが合うほどに優しいものだった。振り切ろうとすれば、振り切れた。でも、姉さんのあんな顔を見てしまったら……。この手を離して逃げた瞬間に、私を支える何もかもが崩れ落ちてしまいそうな気がしたのだ。
「静かやなぁ」
 窓の外、赤く燃ゆる空を眺めながら姉さんは呟いた。そっと窓を開けると、まだ歌う元気を残したアブラゼミの唱和と、ヒグラシの哀しげな鳴き声が、厚いガラスに遮られることなくまで届き鼓膜を揺らした。あまりの騒々しさに、普段の話し声だと、近くでないと聞き取れないだろう。杉浦さんに聞かれないように配慮したのだと、私はすぐに気づいた。
「うるさいよ」
 私はすこし笑みを浮かべて言った。
「せやなぁ」
 冷房で冷やされた部屋は、外気にさらされ、次第に熱を帯びていく。汗が一滴、頬をしたたり、落ちる。夏の気配を孕(はら)んだ空気が侵入し、姉さんの髪をかすかに揺らした。
「なんでここに連れてきたんか分かる?」
 私は首を左右に振る。姉さんは見えていないはずなのに頷いた。
 夕陽を背景にして、姉さんは私を向いた。眼鏡の奥からのぞく瞳は、真っ直ぐに私を見つめている。穏やかで優しい姉さんの心が、肌で感じられるような気がした。
「綾乃ちゃんはな、今は恋を育ててる最中なんやで。邪魔したらあかへんよ。好きでたまらないけど、素直になれないなんて、ほんまいじらしいなぁ」
「姉さんは、それでいいの?」
 温和な笑みを浮かべる。それが姉さんの答えだった。
「で、でも杉浦さんと歳納さんが……例えば、同棲したとしたら」
「ぶほっ!!」
 姉さんは、突如大量の鼻血を、噴水の如く噴き出した。すぐさまティッシュを鼻につめてあげる。
 想像だけで、これだけの血を流してしまうのだ、もし、本当に……腹が煮えくり返ってたまらないけど、本当にそうなったとしたら……。
「幸せすぎて、死んでまうかも」
「それじゃあ――」
「勘違いしたらあかんで。わたしは綾乃ちゃんのために死ねんのなら、それが本望や」
 姉さんは、私の頭をそっとなでた。
「私はな、綾乃ちゃんが幸せならそれでええんよ。ずっと友達でいれて、綾乃ちゃんの笑顔がみれるんなら」
 私は口を開くことができなかった。姉さんの想いは硬く、くつがえすことができないと知ったから。
「ありがとうな、千鶴」
 額に触れる姉さんの手は、暖かくて、優しくて、すこしこそばゆかった。

 閲覧スペースに戻ると、杉浦さんは本を開いて待っていた。
「待たせてごめんな」
「別にいいわよ。それより、用件はすんだの」
 怒らせてしまったと思っていた私は、いつもの杉浦さんの調子にすこしまごつく。
「あの、ご、ごめんなさい」
 頭を下げて言うと、杉浦さんは、なんでもないといった様子で、
「別に怒ってなんかないから、顔をあげて。ふふ、千歳の妹に声を荒げたりするなんて、考えられないもの」
「せやでぇ。綾乃ちゃんが本気で、心から、愛を込めて怒るんは、歳納さんだけやもんなぁ」
「べ、別にそんなこと」
「あ、もうこんな時間や。はよ行かんと、みんあ帰ってまう」
「そうね。あ、千鶴さんはどうするの? ……って、涎たれてるわよ」
 ぼんやりと二人を眺めていた私は、はっと我に変える。
「私は、もうすこし本を読んでから」
「そんじゃ行こか。ほなな、千鶴」
 姉さんと杉浦さんは、連れ立って図書館を出て行った。私は、二人で談笑しているのを、やがて姿が見えるまで見つめていた。
 やっぱり二人はお似合いだよ。
 本を畳んで書架に戻し、私は思った。
 二人は、たとえどんな道を歩んだとしても一緒だ、と。共に笑いあって、幸せそうにしている姿。これは、きっと夢ではない。少なくとも、私はそう信じる。
 私は眼鏡を外し、しばしの間、想像もとい妄想に耽ることにした。



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4 Comments
柊ひより
08 20, 2011
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すばらしい~!(*´∀`) 樹さんなら池田姉妹で一作やってくれると思っていましたw

やっぱり千歳→綾乃はイイと思うのです。
本編にもありましたが、「私は綾乃ちゃんが幸せならそれで…」というのは
あながち千鶴の妄想の世界だけではないと思います。
千歳が自分の綾乃への想いに気づいてから、綾乃の京子への想いを知り、
そしてその最愛の友人のためにそっと身をひく決意をするまでの過程を考えると、
なんとも胸の締め付けられる思いです。

しかし池田姉妹は当人たちも十分おいしい組み合わせですよねw
ハムスター
08 21, 2011
URLedit ]
あ、関西弁に特に問題はなかったですよ。

千鶴視点での千歳×綾乃は最高ですね!
自分の気持ちを押し殺して綾乃を応援する・・・切ないですね。だからこのカップリングはグッとくるんでしょうね・・・

いい百合ssありがとうございました!

08 21, 2011
URL [ edit ]
柊ひよりさん、コメントありがとうございます。
池田姉妹の話は、もうやらないと、なんかいけないんじゃないかって思い書きました。
千歳×綾乃、いいですよねぇ。池田姉妹もいつか書いてみたいものです。
ゆるゆりは、カップルが定まってないところも、いろいろと想像できるという意味で魅力なんで、千歳一人をとっても、悩んでしまいます。
やはり秘めた想いって、そそられますよね。

08 21, 2011
URL [ edit ]
ハムスターさん、こんにちは。
関西弁は見直してみると粗ばかりで、調べて書き直すのに苦慮しました。問題ないようでよかったです。
原作でも、千鶴視点の妄想は至高の見所でしたよね。
切なさを感じさせるカップリングは、見入られるもので、それが眼鏡百合となると、もう!
毎度、感想ありがとうございます。ではでは。
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